テスト前提で設計したWebアプリのハンズオン - 読書管理アプリ その6

はじめに Part5でUIまで実装が終わった。機能として動くものはできた。テストも15件、全パス。 ここで一度立ち止まって、なぜこの設計になったのかを振り返る。 正直に言う。最初の要件はこうだった。 「クリーンアーキテクチャっぽく、テスタブルにしたい」 それだけだった。クリーンアーキテクチャを理解して設計したわけじゃない。 結果的にクリーンアーキテクチャを遂行したのは生成AIだ。 そしてPart3以降、自分はほとんど手を動かさなくなった。 設計ドキュメントをAIに渡したら、実装サイクルがほぼ自動で回るようになったからだ。 途中でこう思った。 「俺いる必要なくね?」 この記事はその問いに向き合いながら、設計を改めて言語化したものだ。 このシリーズ自体がTDDだった 書き終えてから気づいたことがある。 このシリーズのサイクルはこうだった。 AIに実装させる ↓ 動かす・読む・会話する(認識のズレを検出) ↓ ズレを言語化してAIにフィードバック ↓ 納得したら記事にする ソフトウェアのTDDは「Red → Green → Refactor」だけど、 自分がやっていたのはこれだ。 Red → 認識がズレていると感じる Green → 会話して納得する Refactor → 記事として言語化する 人間がテストケースになっていた。 TDDが「仕様をテストで表現する」なら、自分がやっていたのは「理解をフィードバックループで検証する」だ。構造は同じだと思う。 誤っていた認識たち 振り返ると、理解がズレていた箇所がいくつかあった。 「PolicyはVOと1-1になる」と思っていた 最初、ReadingStatusPolicyがReadingStatusに対応しているのを見て、PolicyはVOと対になるものだと思っていた。 違う。今回たまたま1-1になっているだけだ。 Policyの本質は複数のEntityやVOをまたいだ条件判定だ。たとえば「同じ本に同じユーザーが2回レビューできない」というルールは、Book・User・Review[]をまたぐ。これをPolicyに出す。 VOに閉じるルールならVOに書けばいい。Entityをまたぐ判定が必要になったときにPolicyの出番だ。 「Domainは外部を知らない」という捉え方が逆だった 「DomainはDBを知らない」という言い方をよくするが、正確には逆だ。 外部がDomainを知っている。 向きの問題だ。Domainが何かを避けているのではなく、依存の矢印がすべてDomainに向かって刺さっている。 Route Handler ↓ Service ↓ Repository interface ↓ Domain(Entity / ValueObject / Policy) この向きがわかって初めて、Serviceの役割も見えた。 Serviceが何をするのかわかっていなかった 依存の向きが腑に落ちるまで、Serviceが何者なのかずっと曖昧だった。 答えはシンプルだった。フローだけ持つ接着剤。 async startReading(id: string): Promise<Book> { const book = await this.repo.findById(id); // 取得 if (!book) throw new NotFoundError(...); book.changeStatus(ReadingStatus.Reading); // Entityのルールに従う await this.repo.save(book); // 保存 return book; } ServiceはDomainのルールを自分で判定しない。 canTransitionを自分で呼ばない。book.changeStatus()に委ねるだけだ。 判定はEntity・VO・Policyが持っている。Serviceはその結果を使ってフローを組む。 ...

March 5, 2026 · 2 min

テスト前提で設計したWebアプリのハンズオン - 読書管理アプリ その2

前回のおさらい その1では ValueObject・Policy・Entity を作った。ポイントは「フレームワークを一切使わないので、テストがただの関数呼び出しになる」という体験だった。 今回はいよいよ Service 層に入る。ここが設計の核心だ。 複数のクラスをまたぐフローを、DI(依存性の注入)を使って DB から切り離す。 今回追加したもの src/ domain/ entity/ User.ts # 追加 Review.ts # 追加 valueobject/ UserName.ts # 追加 ReviewComment.ts # 追加 repository/ BookRepository.ts # 追加(Interface) service/ BookShelfService.ts # 追加 User と Review を追加する まず Entity の準備。今回は単純なので ValueObject から作る。 UserName export class UserName { constructor(public readonly value: string) { if (!value || value.trim().length === 0) { throw new Error("UserNameは空にできない"); } if (value.length > 50) { throw new Error("UserNameは50文字以内"); } } } trim() してから空チェックしているのがポイント。スペースだけのユーザー名を弾く。 ReviewComment export class ReviewComment { constructor(public readonly value: string) { if (!value || value.trim().length === 0) { throw new Error("ReviewCommentは空にできない"); } if (value.length > 1000) { throw new Error("ReviewCommentは1000文字以内"); } } } User Entity import { UserName } from "../valueobject/UserName"; export class User { constructor( public readonly id: string, public readonly name: UserName, ) {} } User 自体はシンプルだ。ロジックがない。ビジネスルールが増えれば changeXxx() メソッドが生える設計だが、今は id と name を持つだけでいい。 ...

March 4, 2026 · 4 min

テスト前提で設計したWebアプリのハンズオン - 読書管理アプリ その1

なぜこの記事を書いたか 動くものをまず作って、そこにテストを後付けしようとした。しかし、できなかった。 具体的にはこういう壁にぶつかった。 ModelなどのDB接続の切り替えがうまくいかない Controllerをテストしようにもいろいろおかしくなる 悩んだ結果、気づいたことがある。そもそもそんなものは単体テストじゃない。 ロジックをControllerやModelに全部書いていたのが悪かった。 「じゃあ最初からそう書けばいいじゃないか」という話だが、それが難しい。雑魚プログラマにいきなりクリーンな設計はできない。 なので発想を逆にした。テスト前提でコードを書く。 テストが書けない場所にはロジックを書かない。それを体で覚えるために、今回のハンズオンを始めた。 方針 生成AIに実装ヒントと次のステップを教えてもらいながら、コードは自分で書く。 正直、コード自体はAIに書かせてもいいと思っている。ただ、設計の考え方は頭に入れる必要があるので、写経しながら理解を深めている。 テストする場所の原則はシンプルだ。 フレームワークで用意された便利クラスはテストしない DBやAPIなど外界と接する場所はテストしない 自分で書いた純粋なTS部分だけをテストする 作るもの 読書レビューサイト。Todoアプリはビジネスロジックがほぼ存在しないのでテストの練習に向いていない。読書レビューサイトなら本の状態遷移(積読→読中→読了)などのルールが自然に生まれるので、テストの旨味がある。 技術スタック Next.js SQLite + Prisma vitest ディレクトリ構成 src/ domain/ entity/ valueobject/ policy/ service/ repository/ この構成の考え方は以下の通り。 層 役割 entity 概念そのもの(Book, User) valueobject 値の制約を持つクラス(ISBN, Rating) policy ビジネスルールを切り出したクラス service 複数クラスをまたぐフロー repository DBとのアダプタ(副作用をここに閉じ込める) repositoryはCI4でいうModelに近い立ち位置だ。 ただし決定的な違いがある。CI4のModelはActiveRecordパターンでクラス自身がDBを知っているため切り離せないが、repositoryはInterfaceと実装を分けることで差し替え可能にする。これがDI(依存性の注入)の肝で、テスト時にMockに差し替えられる。 vitestのセットアップ npm install -D vitest @vitejs/plugin-react vite-tsconfig-paths npm install -D @testing-library/react @testing-library/jest-dom vitest.config.ts import { defineConfig } from 'vitest/config' import react from '@vitejs/plugin-react' import tsconfigPaths from 'vite-tsconfig-paths' export default defineConfig({ plugins: [react(), tsconfigPaths()], test: { environment: 'jsdom', globals: true, setupFiles: ['./src/test/setup.ts'], }, }) package.jsonのscriptsに追加。 ...

March 4, 2026 · 2 min