はじめに
世界の国々の経済は、どのように変化しているのでしょうか?今回は、World Bank(世界銀行)が提供するオープンデータを使って、各国の産業構造の変化を可視化してみました。
この記事では、Pythonのpandasとmatplotlibを使って、1997年から2024年までの約30年間の産業構造の変化をグラフにする方法を紹介します。
産業構造とは?
経済学では、産業を3つに分類します:
- 第一次産業:農業、林業、漁業など(自然から直接資源を得る産業)
- 第二次産業:製造業、建設業など(原材料を加工する産業)
- 第三次産業:サービス業、金融、小売など(形のないサービスを提供する産業)
国が経済発展すると、第一次産業から第二次産業へ、そして第三次産業へとシフトしていく傾向があります。これを「産業構造の高度化」と呼びます。
使用したデータ
World Bankが提供している以下のデータを使用しました:
- 第一次産業: Agriculture, forestry, and fishing, value added (% of GDP)
- 第二次産業: Industry (including construction), value added (% of GDP)
- 第三次産業: Services, value added (% of GDP)
これらは各産業がGDP(国内総生産)に占める割合を示しています。
分析対象国
今回は、経済発展段階や地域が異なる10カ国を選びました:
- 日本(JPN): 先進国・アジア
- 中国(CHN): 新興国・急成長
- アメリカ(USA): 先進国・北米
- ドイツ(DEU): 先進国・欧州
- インド(IND): 新興国・南アジア
- 韓国(KOR): 先進国・アジア
- インドネシア(IDN): 新興国・東南アジア
- ベトナム(VNM): 新興国・急成長
- シンガポール(SGP): 先進国・都市国家
- タイ(THA): 新興国・東南アジア
- ポーランド(POL): 中所得国・欧州
Pythonコード
以下が実際に使用したコードです。
# 第一次: https://data.worldbank.org/indicator/NV.AGR.TOTL.ZS
# 第二次: https://data.worldbank.org/indicator/NV.IND.TOTL.ZS
# 第三次: https://data.worldbank.org/indicator/NV.SRV.TOTL.ZS
# 産業付加価値GDP
import pandas as pd
import matplotlib.pyplot as plt
# CSVデータ取得
df_1 = pd.read_csv('1.csv', skiprows=3)
df_2 = pd.read_csv('2.csv', skiprows=3)
df_3 = pd.read_csv('3.csv', skiprows=3)
# 国名のマッピング
country_names = {
'JPN': 'Japan',
'CHN': 'China',
'USA': 'United States',
'DEU': 'Germany',
'IND': 'India',
'KOR': 'South Korea',
'IDN': 'Indonesia',
'VNM': 'Vietnam',
'SGP': 'Singapore',
'THA': 'Thailand',
'POL': 'Poland',
}
def to_chart(df, codes, begin, end, title, filename):
plt.figure(figsize=(14, 9))
for code in codes:
data = df[df['Country Code'] == code]
years = [str(year) for year in range(begin, end)]
dict_data = data[years].iloc[0].to_dict()
years = list(dict_data.keys())
values = list(dict_data.values())
line = plt.plot(years, values, marker='o', linewidth=2, markersize=4)
# 線の最初(スタート地点)に国名ラベルを表示
plt.text(years[0], values[0], f'{country_names.get(code, code)} ',
verticalalignment='center', horizontalalignment='right',
fontsize=9, color=line[0].get_color(), fontweight='bold')
plt.xlabel('Year', fontsize=11)
plt.ylabel('Value (%)', fontsize=11)
plt.title(f'{title} ({begin}-{end})', fontsize=13)
plt.grid(True, alpha=0.3)
plt.xticks(rotation=45)
plt.tight_layout()
# 画像として保存
plt.savefig(filename, dpi=300, bbox_inches='tight')
plt.close()
# 3つのグラフを生成
to_chart(df_1, list(country_names.keys()), 1997, 2024,
"第一次産業 (Agriculture, forestry, and fishing)", "chart_primary.png")
to_chart(df_2, list(country_names.keys()), 1997, 2024,
"第二次産業 (Industry including construction)", "chart_secondary.png")
to_chart(df_3, list(country_names.keys()), 1997, 2024,
"第三次産業 (Services)", "chart_tertiary.png")
分析結果
第一次産業(農業・林業・漁業)

主な傾向:
- 先進国は1%未満:日本、アメリカ、ドイツ、シンガポール、韓国などはほぼ横ばいで1%前後
- 新興国は減少傾向:中国(17% → 7%)、ベトナム(26% → 12%)、インド(24% → 16%)は大きく減少
- 途上国は高め:インドネシアやタイは約8-13%を維持
これは、経済発展に伴い農業中心から工業・サービス業へとシフトする典型的なパターンです。
第二次産業(製造業・建設業)

主な傾向:
- 中国の工業化:約45-47%で高水準を維持(世界の工場としての地位)
- インドネシアも高水準:約40-45%で推移
- 先進国は減少傾向:日本(34% → 29%)、アメリカ(23% → 18%)、ドイツ(28% → 27%)
- シンガポールの激減:約32% → 22%(金融・サービス中心へ転換)
興味深いのは、ベトナムやタイなどが約30-35%で安定していることです。これらの国々は製造業を維持しながら発展しています。
第三次産業(サービス業)

主な傾向:
- アメリカが最高:約72-78%とサービス経済の典型
- 先進国は高い:日本(65% → 70%)、ドイツ(62% → 64%)、シンガポール(64% → 73%)
- 新興国は増加傾向:中国(35% → 56%)、インド(39% → 49%)、ベトナム(42% → 43%)
全ての国でサービス業の比率が増加または維持されており、「サービス経済化」が世界的なトレンドであることがわかります。
データから読み取れること
1. 経済発展のパターン
経済発展は以下のような段階を経ることが多いです:
- 農業中心:第一次産業が主体(途上国)
- 工業化:第二次産業が成長(新興国)
- サービス経済化:第三次産業が主体(先進国)
今回のデータでも、この流れが明確に見て取れます。
2. 中国の特異性
中国は経済規模が巨大でありながら、第二次産業の比率が約45%と非常に高い状態を維持しています。これは「世界の工場」としての役割を反映しています。
3. 先進国の脱工業化
日本、アメリカ、ドイツなどの先進国では、製造業の比率が徐々に低下しています。これは:
- 製造拠点の海外移転
- サービス業(IT、金融、医療など)の成長
- 高付加価値産業へのシフト
といった要因が考えられます。
4. 新興国の急速な変化
ベトナムや中国では、わずか20-30年で産業構造が大きく変化しています。これは急速な経済成長と工業化を反映しています。
World Bankデータの素晴らしさ
今回使用したWorld Bank Open Dataは、データ分析の練習に最適です:
- 標準化されたデータ:国際比較が容易
- 長期時系列:数十年分のデータが利用可能
- 無料でオープン:誰でもダウンロード可能
- 豊富なカテゴリ:経済、教育、健康、環境など
- 簡単にアクセス:CSV、Excel、API対応
他にも以下のようなデータソースがあります:
- OECD.Stat: 先進国中心の詳細データ
- IMF Data: 金融・為替系データ
- Our World in Data: 美しい可視化
- UN Data: 国連の統計
まとめ
Pythonとpandasを使えば、世界経済のような大きなテーマでも、簡単にデータを可視化して分析できます。
今回わかったことは:
- 世界的に「サービス経済化」が進んでいる
- 新興国は急速に産業構造を転換している
- 先進国は製造業からサービス業へシフトしている
- 中国は「世界の工場」として高い工業比率を維持
「当たり前」のことでも、実際にデータで確認すると新しい発見があります。World Bankのデータは宝の山なので、ぜひ色々なテーマで分析してみてください!